読書日記PNU屋

読書の記録

あさのあつこ「地に埋もれて」

地に埋もれて
あさの あつこ著
講談社 (2006.3)
ISBN:4062132753
価格 : \1,470

Amazonで見る



男に埋められた優枝は、白兎と名乗る少年に助けられるが。


優枝の人生見つめ直し物語。
「透明な旅路と」オンライン書店ビーケーワン:透明な旅路と2005.4
に続いて白兎クンが登場する『不思議な少年』ものである。
シリーズ前作を読んでいた方が設定の飲み込みは早いと思うが、
本書から読んでもOKだろう。


出だしは私にはきつかった。
なにしろ生死の境をさまよったのだから当然かもしれないが、
ヒロイン・優枝に全く感情移入出来ないのだ。
優枝が切り捨てる同僚・孝美の意見の方がまっとうに思えて仕方ない
のである。そこら辺も含めて、優枝が尋常ならざる精神状態にあった
ということだろうか。


その後も、優枝が白兎を無礼だと怒るシーンがあるが、先に
不埒な真似をしたのはどう見ても優枝の方であって、アンビバレント
この上ないのである。
そして彼女のルーツをたどる旅はいい話ではあるが、予想圏内にオチる。
少しとはいえ性描写(果たして必要だったのか?)もあるし、
大人を対象とした小説だと思うのだが、展開に意外性がないところが
物足りない。
良く言えば王道、悪く言えばベタなよくある話というところか
(ラストには驚かなければならなかっただろうか?)。


白兎の透明感があってとらえどころのないキャラは魅力的なので
続編もいちおう読みたい。