岩井志麻子「べっぴんぢごく」
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春をひさぐ女乞食の子・シヲは運良く豪農の養子におさまることが
出来たが…。著者お得意の岡山昔語り。
最近の岩井小説の、異国愛人物語に食傷していたのでこれはうれしい。
かの傑作「岡山女」2003.7
のごとくにシヲには霊感もあるので余計に期待膨らむ。
しかし、物語は十年数十年を一息に飛ばして進んでいく。
その想像しか出来ない部分、敢えて語られなかった部分にこそ
興味を覚えたので、もどかしさを感じた。
結局、私が知りたかったのは凶々しさをまとったシヲのことだけで、
コンプレックスの塊ふみ江にも、
美しいが凡俗な欲望の塊な小夜子たちには感心を抱けなかったのだ。
シヲとその母の物語こそは総毛立ったが、なぜ美しい母から生まれた
美しいシヲがふみ江のような娘を産んだのか釈然としないし、
ふみ江以降の物語は、どこか頭でこしらえた話のように、
私には感じられたのだった。