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読書の記録

小路幸也「東京バンドワゴン」

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古書店東京バンドワゴンは、風変わりだけど心あたたかな
一家が運営していて…身近な謎を解きつつ過ぎ行く大家族の春夏秋冬。


堀田家は頑固おやじの勘一を筆頭に、ロッカーの我南人、
落ち着いた紺にモテモテの青、訳あり美女の藍子と娘の花陽などなど
個性的な面々集った大家族なのである。


あたたかでやさしい作品で、読み心地が良い。
すごいと感じたのは、やはりこの愛すべき堀田家の造形である。
仲良く和やかな堀田家であるが、
六十にもなる我南人は金髪の現役かつ伝説的ロッカーだし、
藍子は花陽の父親を頑として教えない。
各自の事情は認めつつ、プライバシーは保ち、それでいてけして
冷淡ではなく困った時は家族が全力でサポートしてくれる。
なんとも、理想的な家庭ではないか。


家族間の絆が失われがちな現代を舞台にしているところもいい。
まだ生きている濃密なご近所付き合いや、レトロな街並みなど
過去の方が舞台としてはしっくり来るかもしれない。
しかし設定を現代にしたことにより、同時代をこんな素敵な一家と
共有しているかのような感覚がそこに生まれ、読者もまた
堀田家ワールドに優しく包まれるのであった。