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読書の記録

新堂冬樹「黒い太陽」

黒い太陽
新堂 冬樹著
祥伝社 (2006.3)
ISBN:4396632614
価格 : \2,205

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金のため、風俗を嫌いながらもキャバクラ従業員になった中卒の
青年・立花だが。
「風俗王」と呼ばれる藤堂に反目する立花。
この立花がアンバランスなので参ってしまう。
なにしろ思いつく策はコドモっぽいし、語ることまで先達のパクリ
だったりするのだから。先行する成功者の猿真似ばかりでは、
後進のぺえぺえが成り上がれるわけはないと思うのだが。
大胆な思い付きを実行するのはすごいかもしれないが、
肝心なところがぬけているよ立花。
 

キャバクラや、ヌキ系と呼ばれる性風俗の裏側などを描写していて、
そういうところに興味があれば楽しめるとは思うのだが、私は
主人公・立花がダメ男すぎてついていけなかった。
だってなあ…第一、複数店舗を流行らせている「風俗王」に対し、
金をだまし半分にむしり取りながら一店舗をそこそこうまく経営した
だけで「風俗王」と並んだ気になっている立花って頭悪くない?
お遊び半分のあっちはともかく、てめえは背水の陣もいいところなのに、
何いきがってるの?と思うし…。
 

読者が思いもよらない方法で「風俗王」が攻めて来るのならば
面白いと思えるのだが、あれ?この人はどうしたの?というところに
パッチをあてずに放ったらかしなのが自業自得と思うのだよ。
シロウトの私でも気付くところに気付かないなんて立花の風俗生命は
長くないだろ。
 

この作品の一番の不満は、わざと書かないことにより余韻を狙ったの
かもしれないけれど、立花がある重大な決断をするところの心情描写が
大胆に省かれているところ。そここそが、この作品のキモなのでは、
ないの?いきなり結果をポンと書かれても…物足りなかった。