奥田英朗「町長選挙」
世の中の有名人も、それなりに悩んでる…あいかわらず注射フェチの
精神科医・伊良部先生がまたまた大活躍のシリーズ第三弾、4編を収録。
「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」2004.4
に続く伊良部シリーズ三作目は、TVでおなじみのあの人たちに焦点を当てる。
もちろん全体としては創作に違いないのだが、実在するモデルが
挑発的なほど透けて見えて、そこが好き嫌い分かれるかも。
伊良部先生は全然変ってなくて、今回「ひきこもり」になるという
売り文句だったから、ついに伊良部先生にシリアスな出来事が起こる
のか…?!って心配しちゃったよ。
2作目では、1作目と全然成長しない伊良部にちょっぴりマンネリを
感じたりもしたのだが、決まったオチの時代劇が安心感を呼ぶように、
この快いマンネリこそが、このシリーズの魅力なのかもしれない。
そう、伊良部は医療界のピーター・パンなのである
(筒井康隆「富豪刑事」のドクター版…というと少し違うか)。
伊良部は名門医者一家に育った大金持ちの医者であり、
金次第で言うことをきいてくれるがポリシーはしっかり持った
エロ可愛い看護師がおり、
そののんびりとしてガキっぽい性格から皆に愛される。
だから出世やカネ稼ぎであくせくもしないし、やりたい放題なのだ。
帝国の王様ほどに、わがままでもいい…それが伊良部なのだ。
彼に会った人は、みな毒気を抜かれ、伊良部とのあまりの差違相違に、
自分の人生を根本から見つめ直さざるを得ない。
それが治療みたいな効果を出しちゃってるのだね、たぶん
(周囲からダメ人間と思われている節のある伊良部のもとには、
真剣に生命にかかわる精神疾患の人は、紹介されないという設定だから、
その程度のサジェスションでもみな治ってしまうのだ)。
忘れたころにまた会いたい、ピーター・パン医師・伊良部。
ティンカー・ベルは今回私生活も少しだけ明らかになり、
出番の増えた看護師マユミ。そしてウェンディーは我ら読者だ。
また我々の心が日々の暮らしで疲れた時に、
ドクター伊良部ネバーランドに連れていってほしいと願うのであった。
p.s.え〜っ、伊良部の外見って金●○なの?意外。
ホンジャマカの石塚ちゃんみたいなのかと思ってたのに…(泣