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読書の記録

ゼナ・ヘンダースン「ページをめくれば」

ページをめくれば
ゼナ・ヘンダースン著 / 中村 融編 / 安野 玲訳 / 山田 順子訳
河出書房新社 (2006.2)
ISBN:4309621880
価格 : 1,995円

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河出奇想コレクションの一冊。解説によれば著者は小学校教諭であった
とのこと、そう言われてみると子供が生き生きとし、
また子供をしっかり受けとめる大人の物語が多いように思える。
 

「忘れられないこと」
少し変わった転校生・ヴィンセントの担任教師が体験したこととは。
ヴィンセントがなんて素直なよい子なんだろう!
この他の「ピープル」シリーズも読みたくなってしまった。

 
「光るもの」
余裕なき家庭の子・アンナは近所のおばさんの家に泊まるが…。
なぜおばさんがアンナを招いたのかに一抹の疑問がないではない
のだが未知のものへの魅力あふれる作品。
見くびられがちなおばさんに隠されたあることが素敵だ。
 

「いちばん近い学校」
珍しい新入生。
ヴィジュアル描写が少なめなところが、効果的であると同時に
もどかしく興味かき立てる。ヴァニー可愛い。
ついでにストリングラーも可愛い。
 

「しーッ!」
病身の子供。
映画「トワイライト・ゾーン」のような味わい。
 

「先生、知ってる?」
両親の不仲なリネットの話に心痛める担任だが。
まさしくサスペンスミステリーだ。

 
「小委員会」
異星人との会合に臨む夫・ソーンを気遣う妻・セリーナだが。
これは大好きだ!ドキドキはらはらして、その上可愛らしい。
特に女性読者に断然おすすめしたい傑作。この作品に出逢えただけでも、
本書を読んで良かったと思う。
 

「信じる子」
新入生は何でも信じやすい子で…。
何が怖いかと言えば彼女が至極まっとうな点で、そのディズミーを
そこまで追い込む無邪気な悪意こそが恐ろしいのかもしれない。
 

「おいで、ワゴン!」
幼児期の煌めきは、なぜ大人になると失われてしまうのだろうか。
全くの異星人ならいざ知らず、変わった子を苦手に思うのは、
我々が幼年期を一度過ごして来たがゆえに、平凡な自分と他者の異能を
明確に意識してしまうからではないだろうか。
 

「グランダー」
嫉妬に悩む男は通りすがりの老人からグランダーのことを聞く。
人が思い込むパワーにはすごいものがあると感じた。
 

「ページをめくれば」
小学一年生の素晴らしい担任、そして素晴らしい授業。だが…。
真実の持つ苦味と重み。知るがゆえの苦悩が心揺さぶる。
 

「鏡にて見るごとく−おぼろげに」
奇妙な光景が見えてしまう女性。
オチはどこに?と思わないでもないが不思議な緊迫感と
胸騒ぎムードたっぷりな作品。