渡辺球「俺たちの宝島」
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ゴミの島で暮らす俺たち…
表題作および「煙の山」「千年も、万年も」を収録。
前作「象の棲む街」2003.12
はラストが私好みではなかったが、生き抜く子供達に魅力があったので
本作も手に取ってみた。これが当たり。
ゴミを拾い、売って暮らす若者たちの共同体が視点を変えながら
描かれていく。前作ほどの生死をかけたダークな迫力こそはないものの、
仲間と助け合い暮らしていく子供達に強く惹かれた。
現代文明や社会に対する批判も多く含んでいるけれど、
基本的にエンタメとして小難しいことを考えずに読むことも可能だ。
三話ともそれぞれクールで頼れるリーダー、たよりないがお人好し、
野心的なリーダーと対照的な人物が語り手となるところも面白い。
味わいを深めているのは、第二話に登場する強欲な商人・昭和堂主人だ。
前作に登場し、未だ忘れ得ぬ印象を残す「脂面」といい、
汚い商人を描かせたら抜群に巧い作家だと思う。
その企みを知ってか知らずかボケ倒しまくる小見山、
実は大物かもしれない。
少々善良に過ぎる印象はあるが、楽しい時間を過ごさせてくれる一冊。
次回作も期待大!
p.s.沙藤一樹「D−ブリッジ・テープ」
や打海文三「裸者と裸者」
の設定をもっとポジティブにしたら本作に近いだろうか。