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読書の記録

フレドリック・ブラウン「さあ、気ちがいになりなさい」

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ハッピーかアンハッピーか、サプライズたっぷりにおくられる怪奇幻想短編集。
「異色作家短編集」シリーズ第二巻である。解説は漫画家・坂田靖子。 
なんと面白い物語があることか、不可思議な設定の上に人間であることの
せつなさや哀しさをえがきあげるストーリー、初読なのに既視感があるのは、
この奇想天外な発想と、普遍的人間性の融合が私の大好きな諸星大二郎
漫画テイストと共通する部分があるからかもしれない。諸星大二郎や、
手塚治虫「ライオンブックス」が好きならばはまること請け合いの1冊。
みどりの星へ」
見渡す限り赤い星を、相棒ドロシーと探検するマックガリー。
なんとも苦しくせつない。美しい希望のかけがえのなさが想像出来るがゆえに、
マックガリーを責めることは出来ないのだ。彼のその後が気になる。 
「ぶっそうなやつら」
殺人狂が脱走したことを知らせるサイレンが鳴る。
張りつめた前半からの急旋回にくらくら。こういうの好きだ。
「おそるべき坊や」
奇術ショーを見に行く家族。可愛いから、可哀想に変わる印象を堪能したい。
「雷獣ヴァヴェリ」
ラジオ広告文案家が耳にしたあること、それがはじまりだった…。
未曾有の災難と思ったことが…災い転じて…?の、人間たちのハートが見事。 
「ノック」
地球上で最後に残った男が…。やれやれ、グレースは災難だな。 
「ユーディの原理」
実在しない「小人」の原理とは。地味なようでめまぐるしい展開。
どこか藤子・F・不二雄ドラえもん」のような懐かしさをおぼえる。
シリウス・ゼロ」
ぼろもうけした夫婦がたどりついた奇妙な星。
シリウス・ゼロが静かな恐怖を呼ぶ。ウェリーの親心にほろり。
「町を求む」
金儲けにこだわるギャングのジミーだが。鮮やかな印象の作品。
ページ数に驚かされる。
「帽子の手品」
恐怖映画を見たあとで…。おお、小粋な作品!!
「不死鳥への手紙」
十八万年生きてきた「私」とは。価値観をくつがえされる苦痛と快楽
入り交じる作品。
「沈黙と叫び」
誰もいないところで木が倒れたら…。誰がまともで誰が狂っているのか?
恐ろしい作品。 
「さあ。気ちがいになりなさい」
世界の秘密とは。 裏返される予想、くつがえされる予測に
のめりこんでしまった。超絶短編!