三津田信三「厭魅の如き憑くもの」
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山神信仰が息づく神々櫛村には、代々山神の巫女となるべく
運命づけられた、憑きもの筋の家があった。
黒と白の家の思惑飛び交う中、連続殺人の幕があがる…。
まるで横溝正史のごとく、因縁深い山奥の旧家で不可解な連続殺人が
起きていく。日本の憑きものに関しての講釈(カンダーリなどは既に
知っていたが、「牛蒡種」は初めて知った)など、ホラー好きな私は
たいへんに愉しめたのだが、民俗学方面に興味がない向きには
やや退屈かもしれない。
前半のホラー風味の描写は怪異がのどもとまで迫ってくるかのように
素晴らしく、ぞくぞくとした興奮を与えてくれたが小説の哀しさか、
犯人は登場人物の中から求める他はなく、論理による解明は知的ではあれど、
どこか魅惑的な前半に比べ魅力を減じて感じられてしまう、
そこが残念であった。真相は予想圏内ではあったが、細かな仕掛け、
その神経の細やかさには驚かされた。
憑きもの筋の小説といえば坂東真砂子「狗神」1996.12
を思い出すが、ホラーらしくオカルトに徹したあちらよりも、
本作はリアル寄り。
諸星大二郎「稗田礼二郎のフィールド・ノート」や
北森鴻「蓮丈那智」2003.2
シリーズが好きならばおすすめ。
p.s.ミステリー部分よりも、土地の人の語る怪談部分が抜群に面白かった…。