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読書の記録

奥田英朗「ガール」

ガール
奥田 英朗著
講談社 (2006.1)
ISBN:4062132893
価格 : 1,470円
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30代、OL。若いころはチヤホヤされていた彼女たちも、
そろそろ美貌に翳りが?!住居や結婚のことも気になるし、
仕事はたいへんだし…どうしたらいいの!な短編集。
 
「ヒロくん」
三十路で管理職に抜擢された聖子だが、彼女に反目する部下がいて…。
 同著者の「マドンナ」収録の「ボス」も似た設定だったが、
四十路が主人公のあちらとは違って今回は爽やかかつ納得出来る内容。
自分を理解してくれる人が身近にいれば、たとえ外に敵がいたって
やっていけるものだと感じた。
 
「マンション」
マンションが気になる年頃のゆかり。
ゆかりの下手な男より男らしい(…というと男女差別的な
言葉になってしまうが…)性格に快哉を叫びたい。
 
「ガール」
ディスコで青春を過ごした由紀子は、若作り問題に悩むが。
私個人は、好き=似合う、はファッションでは必ずしも当てはまらない
と思うので、ちょっぴり苦笑。他人に迷惑はかけていないかもしれない、
けれどびっくりくらいはさせているかもよ。
 
「ワーキングマザー」
働きながら、仕事もこなしたいと思う孝子。
我慢強い息子がいて、職場の人が気を遣いすぎるほど遣ってくれて、
この幸せ者!と言いたい。
 
「ひと回り」
新人のイケメンくんを指導することになった容子だが、この胸の高鳴りは
…恋?
いちばん見るにたえなかった作品。
いや、デキが良くないというのではなくて。
容子の夢見ぶりが痛々しくて、読むのがつらかったの。
 

…通して読んでみて、最初‘ああ、おもろ’と思った感動が、
読み進むにつれ次第に薄れていくことに気付いた。
それは、盛んに繰り返される『女はわかりあえる』『女は同士』って
モチーフが、現実にはそううまくいかないよな〜と思えて興ざめだった
せいもあるし、主人公は悩んではいるけれど、
結局ひどいイヤなヤツなんていないじゃん!というのも理由。
 

たぶんこれは、‘そういうことって、あるある〜!私もそう思う!’
と自分に似たケースに感情移入して、ままならぬ現実の代替物として
小説内でスッキリする…ための本なのかもしれない。
あまりに悩みレベルがライトに過ぎていいひとばかりなので、
これって会社ファンタジー!?と思えて仕方なかった。
ライトな面白さはあるのでこの評価に。