読書日記PNU屋

読書の記録

「クリスマス・ストーリーズ」

オンライン書店ビーケーワン:クリスマス・ストーリーズ2005.11角川書店\1,575

 
人気作家たちが書く、クリスマス・ストーリーズ。
単行本は箔押しというのかなんだか赤と緑でキラキラした
麗しき装丁で、これはクリスマスのうかれポンチな雰囲気を
出しているのかなぁ、さぞやスゥイートでラヴリーな恋人や
家族の話が詰まっているのだろうなぁと思っていたら予想は裏切られた。

な、なんですか、これは???基督教でもないのに聖夜に浮かれ騒ぐ
日本人へのアンチテーゼ?なんとも重く苦しい話ばかりが続き、
気分はすっかりメニー・苦シミマス。別れだとか陰鬱なテーマが多く、
半分弱が不倫の恋なのもいまいち。しかも、イタいのは別にクリスマスで
なくたって成立する…さらに言うならばクリスマスである意義の
存在しない話が多いこと…クリスマス・ストーリーズと銘打ちながら、
そんなクリスマスっぽくないお話ばかりなのはいかがなもんかしら。
以下、収録作とひとこと感想を。
 
奥田英朗「セブンティーン」★★★
親子の微妙な距離感を描いてもどかしくも面白い。
いかにもイマドキな話であって、人の親ではない私もはらはらしてしまった。
Xmasである必然性もまあまあ。
 
角田光代「クラスメイト」★★★
どうにもならぬ男女の仲を静かに描いている。
あまり好みではないが、会話のリアルさにやられた。クリスマスらしさは少な目。
 
大崎善生「私が私であるための」★
…ごめんなさい(と、最初に謝ってしまおう)私には全然ダメ、
合わなかった。まあ確かにそうなんでしょうけども、ヒロイン精神年齢が
幼すぎ。若いとはそういうことですかしら。とんでもなくオマヌケに
なりそうな物語を、うつくしく文学らしく仕立てた腕前は見事?
 
島本理生「雪の夜に帰る」★★★
あいかわらずセンスの良い、瑞々しい文章。ヒロインがうっかりちゃん
なのも若いからなんだろうね、うん。
 
盛田隆二「ふたりのルール」☆
う…受け付けられません。ヒロインが彼の良さをああだこうだと
酔いしれて語るのだけど、それ、読者の私まで伝わらないし。
また、ヒロインの嘆きはあんたそりゃあ自業自得でしょ、好きで
その地位に甘んじているわけでしょ?と思う。そう考えると、
角田作品は妻側からそういう恋を達観しているし、
まぬけであっても区切りを付けただけ大崎作品の方がカタルシスがある。
ただのズルい男、だらしない恋人達にしか私には思えない。
あっちの彼の方が100倍いいと思うがどうか。
 
蓮見圭一「ハッピー・クリスマス、ヨーコ」★★
いい話では、あるのだが…お子様にそのようなドロドロを語って
聞かせるのは教育によくないのでは…自分とこの子だけならまだしも、
余所様のお子様にまで、であるし。なんだかなぁ…。