読書日記PNU屋

読書の記録

重松清「きみの友だち」

オンライン書店ビーケーワン:きみの友だち2005.10新潮社\1,680
 

友だちって、いったいなに?たくさん友だちがいるのに寂しい子、
親友を求める子…しみじみと心打つ友情物語。
 
重松清小説ってベタでクサいんだよねーと思っていてごめんなさい。
これには私、負けましたわ。甘さだけでなく、厳しさだけでなく、
その感情の折り込み方が、バランスが絶妙なのだ。

たとえば、藤子・F・不二雄ドラえもん」ではのび太とドラちゃんの
視点だけで物事が進むよね。それを、のび太中心ではあるけれど
しずちゃんや、出来杉くんはどう思っているのか、
スネ夫はなんで意地悪なのか、ジャイアンはなんで横暴にふるまって
しまうのか、そんな脇役たちの内面まで書き起こしてしまったような小説
…それが本書なのだ(ドラえもんはあくまで例えで、本作には登場してませんが)。

 
起きることは道徳の授業で見せられたドラマにも似ている。
いじめ、差別etc.それらはどこにでも起こりうることで、
だからこそ自分の身にも加害者・被害者両方の記憶があって、
ゆえに胸を打つのだなぁと感じ入った次第。ベタ?いいじゃない。
クサくてもいいじゃない。今まで重松作品に感じていた、
厳しさと釣り合わぬ思わぬ甘さも本作は控えめでほんと良い感じ。
ただひとつ、文句があるとすれば恵実ちゃんの介入がやや不自然なところか。
でもまあ小説だからねぇ。そのくらいはしょうがないか。

私はブン&モトの爽やか…だけどいろいろある友情が好き。
ラストはやや書きすぎな感もしないではないけど、あっぱれハッピーな
小説でありました。