読書日記PNU屋

読書の記録

石田衣良「てのひらの迷路」

オンライン書店ビーケーワン:てのひらの迷路2005.11講談社\1,575


川端康成「掌の小説」からインスピレーションを得、編まれたと
いうショート・ショート。
私の好みは前半の作品が多かった。
せつなく、やがてほのぼのとする「旅する本」、
クール&シュールな「完璧な砂時計」、絶望の「0.03mm」、
キッチュな設定が妖しくも愉しい「片脚」&「左手」が印象に残った。
後半は、だんだんと著者の私小説っぽい世界になっていく上に、
物語にやや理屈が勝っているように思えてしまうのであまり好みでは
なかったが…著者のファンならば、また違った悦びがあるものと思う。
 
全ての小説に、製作背景がうかがえる「まえがき」がついていて興味深い。
小説家はそこまで人生を糧にしているものなのかと驚き、おののいてしまった。