読書日記PNU屋

読書の記録

上田早夕里「ラ・パティスリー」

オンライン書店ビーケーワン:ラ・パティスリー2005.11角川春樹事務所\1,680 


フランス菓子店ロワゾ・ドールの新顔である夏織は、謎の菓子職人
恭也と出会う。
 
デヴュー作がSF「火星ダーク・バラード」であったので、
ついこの作品も打海文三「ぼくが愛したゴウスト」みたいなパラレルもの
かと思いこんでいたのだが、予想は外れた。
 
あとがきによれば著者は以前菓子職人の業界にいらしたこともある
そうで、菓子の魅力と製作の工夫が伝わって来る作品だ。ただ、
昔ではなく現在の話にしては、やや無理を感じる。恭也については、
インターネット等通じて身元がわかりそうなものだからだ。
細かいところを気にしなければ、ほろ苦くも爽やかで美味しそうな小説
である。自分探しを拡大解釈すれば、広義のミステリーといってもいい。
青春小説らしい味付けもあり、ケーキで人生の難題を解いていく様子は
雁屋哲花咲アキラ美味しんぼ」風でもある。
ケーキ屋には年に一度行くかどうかの私だったが、本書によって
ケーキ屋にもっと行ってみようかな…という気持ちになった。

p.s.独立独歩の彰一がしぶいね。