読書日記PNU屋

読書の記録

辻村深月「凍りのくじら」

 
凍りのくじら2005.11.¥1040

凍りのくじら


高校生の理帆子は父ゆずりで藤子・F・不二雄先生の大ファン。
ドラえもんの世界に憧れながら、子供と大人のはざまで揺らめく
少女を描くサスペンス。
 
うーん、「冷たい校舎の時は止まる」「子供たちは夜と遊ぶ」が
好きだったんで期待したのだが、期待しすぎてしまったのかどうも
愉しめなかった。前2作とドコが違うのか?と思ったら、そういえば
本作は視点がヒロインに固定されているのだった。
が、このヒロインが今風の貞操観念のゆるいコで他人を見下している
割には頭が悪く、私にとっては全然共感・同情出来なかったのだ。
語り手であるヒロインが嫌いなそのせいで、あまり愉しめなかったの
だろうな。
 
藤子・F・不二雄リスペクトというのは伝わってはくるけれど
(引用文献としても提示されているし)、「ドラえもん」に関しては、
ひみつ道具の説明のみならず幾つかのストーリーに関してはオチまでも
ネタバレしてしまっているのだ…それっていかがなものか…。
ドラえもん」より先に「凍りのくじら」を読む人はまずいないだろう
けれど、小道具がドラえもんにあまりにも寄りかかりすぎてはいないか…
と思ってしまう。
 
ここは好きずきだろうが、ヒロインの傲慢「スコシ・ナントカ」遊びなど
が私にはサムくてしょうがなかった。ああほんとに性格が悪い。
なんとも都合の良いストーリーだが、思ったよりもすごいことはなく、
一応感動的なラストではあるが前2作に比べれば小粒な印象が否めない
のであった。まだ年若い作者であるので次回作に期待してみたい。