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読書の記録

ヘレン・モリソン博士・ハロルド・ゴールドバーグ「隣に棲む連続殺人犯」

 
オンライン書店ビーケーワン:隣に棲む連続殺人犯2005.10ソニー・マガジンズ\2,520


医学博士であり、精神科医として長年シリアルキラーとの面接を行ってきた
著者の、大胆なシリアルキラー起源説。
アンチ「ロバート・K・レスラー」本でもある。
 
T.ハリスのフィクションに出てくる「クラリス」に例えられる著者だが
クラリス」に似てはいないな。類似点は犯罪者と対峙する女性だという
ことだけで、地位も立場も違う。
 
ううむ、私の頭脳の問題だろうか。どうも著者の主張を受け入れられない
自分がいる…。著者がこれまで面接してきた連続殺人犯たちの総毛立つ
ような残酷な犯罪が描かれたのち、最終章にて大胆な推論が為される。
確かにレスラーの語る犯人像の方が、心情的に受け入れられやすい。
それをさしひいても、大胆な結論の割に根拠が薄いと思ってしまうのは、
私のレスラーひいきだろうか。そのレベルまで原因を求めるのはいきすぎ
…という気も、しないでもない。
 
著者の論点のここは違うのではないか…と感じられることもあった。
たとえば、
「下着を盗むのに性的意味はなくアウターより布地がやわらかいからだ」
では、なぜブリーフではなくパンティが選ばれるのか、説明がつかないと
思うのだが。また、定説になった動物虐待→殺人のエスカレートに著者は
疑念を持っているそうだが、日本のある有名な連続殺人者は動物虐待を始め
その後殺人に移行している事実がある。連続殺人犯は病でありお国柄で差が
出ない存在ならば、この点はどう考えればよいのか。
そしてレスラーの犯罪論が間違っているなら、彼のプロファイリングが
もてはやされたのは何故なのか(余談だが、上記の某連続殺人犯の
プロファイリングをワイドショーがレスラーはじめ国内外の犯罪通に
依頼したが、当初から犯人が10代である可能性を示したのはレスラーだけ
であった。当のTVキャスターも、10代ということはありえないでしょうと
コメントしていたが、捕まった犯人はまさにその10代であった)。
 
著者から論拠が明解に記されるわけではなく、
膨大な凶悪犯面接から確信したのだ、と言われるだけでは、
連続殺人犯に逢ったこともない素人読者には納得も反論もし難い。
 
ジョン・ゲイシーなど有名どころだけでなく、ボビー・ジョー・ロングや
ロバート・バーデッラなど日本ではマイナーであるが凄惨な犯罪を犯した
者たちについても詳述されていること、実際に犯罪者に面接して描かれ、
加害者家族にまで焦点をあてた犯罪者列伝として本書は貴重であると思う。
 
それだけに、あれこれ診察・実験したいと夢を語って終わるラストは興ざめ。
この問題に結着が付くまでには、まだ時を待たねばならないようだ。

p.s.タイトル(邦題)と内容が合ってないような気がするなぁ…。