読書日記PNU屋

読書の記録

桐野夏生「アンボス・ムンドス」

 
オンライン書店ビーケーワン:アンボス・ムンドス2005.10文芸春秋\1,365


1999〜2005年に発表された作品を収録した、
純文学的ムードただよう短編集。
 
「植林」
負の連鎖がいかに生じるかということ。年齢の割に思考の幼いヒロインが、
平然と残虐なことを行うところに鳥肌。タイトルの意味が深い。 
「ルビー」
紅一点。正直者はバカをみるというのか、女の方が上手であったということか。 
「怪物たちの夜会」
不倫は男女どちらが被害者なのか。くらい、暗い、昏いお話。
男の妻と子が恐ろしい。私だったら男の家の前で…などと想像してしまう。
「愛ランド」
仲よくもない女性3人が、秘密を打ち明け合うが。
これは某アンソロジーで既読。迫力はあるもののどこか絵空事としか
思いたくない自分のせいで、受容しがたい話であった。
「浮島の森」
文人の娘として生まれ、数奇な反省を過ごした女性。これが面白かった。
純文学にはうといのだが、モデルはあるんだろうか。
実話と言われても信じてしまうほどの、迫真の作品であった。
彼があんなに求める物語を、たやすく読める我ら読者は幸せである。 
「毒童」
あっけなさこそが狙いだろうか、私にはあまり好みではないお話。
「アンボス・ムンドス」
不倫旅行から帰ったら、世界は一変していた。
これだよ、これこそが私が求めていたタイプの話!結局私、
「リアルワールド」みたいな話が好きなのな。長編でもいけそうなほどの
ネタをあっさり終えてしまうところが不満と言えば不満か。
 
以上、もっと読みたいのに結末でぷつんと断ち切られることが多い
という印象だった。「ジオラマ」の陰々滅々としたムードにも
似ているかもしれない。