読書日記PNU屋

読書の記録

薬丸岳「天使のナイフ」

オンライン書店ビーケーワン:天使のナイフ2005.8講談社\1,680


妻が、惨殺された。犯人の年齢から罪を問えないことに夫は
苦しんだ…数年後、犯人の一人が殺害される。
愛する娘をかかえつつ、夫は事件を解こうと努力するが。
 
残虐な少年犯罪を正面から描く…のかと思いきや、
被害者である夫の心中を丹念に書いた前半に対し、
後半は創作らしくミステリーらしくなっていき
(=リアリティを失って読み物、作り物らしくなっていき)、
ややそこが私としては拍子抜けした。
 
誰もが現在の少年法に不安(メディアをにぎわす年少者の残酷な
犯罪は裁かれなくても良いのか、再教育はどの程度までなされている
のか…etc.)を持っているだけに、主人公である夫の人の良さも
手伝って、読者を引きこむものがある。
ぐいぐい読ませる力は新人としてはたいしたもので、
大きな破綻もなくきっちりまとまっているが、
逆に言えばオーソドックスであり新味はさほどでもないかもしれない。