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読書の記録

貫井徳郎「悪党たちは千里を走る」

オンライン書店ビーケーワン:悪党たちは千里を走る2005.9光文社\1,785


元はマジメな高杉は、彼を慕う弟分を連れて金持ちから金をだまし取ろうと
アタマをひねる。そこに謎の美女が現れ…。
 
へっぽこ詐欺師トリオが、狂言誘拐を行おうとしたが事態は思わぬ方向へと
進んでいくのだった。
 
誘拐ネタということで、天藤真大誘拐」のような小説なのかしらと思ったが
あれほど社会派っぽくはなく、ライトでスマートなコメディとなっている。
笑いのツボが合う人ならば、くすくすと微笑んでしまうのでは?
 
ただ、惜しいのは愉快なキャラクターが生かされ切れぬまま、
こぢんまりと収束してしまうことか。
主人公・高杉が基本的にはヌケサクながら、部分的に冴えた推理力を発揮する
アンビバレンツな魅力を発揮しているが、
謎の美女(あとで正体ははっきりするのだが)や、高杉の舎弟、
高杉になつく少年などはいまひとつ派手さがなく、
大人しかったように感じられた。
 
とぼけた男と気の強い美女のユーモア・クライムノヴェル。
本作とは犯罪の種類が違うのだが奥田英朗「真夜中のマーチ」にも
似たムードで愉快であった。