読書日記PNU屋

読書の記録

馳星周「楽園の眠り」

 
オンライン書店ビーケーワン:楽園の眠り2005.9徳間書店\1,680


虐待されたもの同士が出会い、逃げようとするが社会は厳しく…。
 
これは、人間の愚かしさ、弱さ、醜さをえぐり出す作品だ。
エンターテインメントとして読むには少々重い、だがその割に児童虐待
心理、問題の扱いがどこか半端に感じられるのだが、
異様な迫力があってラストまで目が離せない。
 
予定調和というか予想のつくラストでは、ある。
そこに絶望するか救いを探そうとするのかは、読者がどれだけ人間と
いうものを信じられるのかによるのだろう。私としては希望を少しでも
遺しておきたい。
 
登場人物の誰ひとりとして、好きになれないところは或る意味すごい。
父・友定は虐待する事故の弱さとなかなか向き合えないずるさを持っているし、
妙子はあまりに幼稚で子供じみていて同情出来ず、
ヒデはただの薄汚い男としか私には思えない。
弱い=優しい、ではないのだから。

感情でつっぱしり、エゴイスティックな理屈で軟弱な自分を武装する人々。
人間とは、かくもどうしようもない存在なのか。人は誰もが寂しく、
みじめで、他人にすがりつかずにはおれないものなのか。

引きこまれるストーリーではあるが、たいへんにストレスフルな
読書体験であった。