読書日記PNU屋

読書の記録

堂場瞬一「バッド・トラップ」

オンライン書店ビーケーワン:バッド・トラップ2005.7幻冬舎\1,785

この本で一番面白かったのは、表紙カバーのイラストだった。以上。
 
…ではあまりにそっけないので、ざっと振り返ってみると…。

口がうまくて優男の詐欺師・リュウは演技がうまく肝のすわった美女・彩と、
ベジタリアンで元・傭兵の御手洗とのトリオで華麗な犯罪を目指していた、
ところが横やりが度々入り、そこにリュウの恋愛もからんでくるというお話。
 
狙う獲物も黄金のケツァルコアトル像と申し分ないのであるが、
リュウの杜撰さときたらどうだ。こんな計画にひっかかるのは、
よほどアタマのおめでたい人間だけであろう。
詐欺師の華麗なテクニックが読めると思っていた私はかなりここで
ガックリきた。考えようによっては、こんなアホな計画でも相手を
ダマしおおせてしまえるところが或る意味華麗なのか???
 
そして車小説としても恋愛小説としても、同系統の垣根涼介サウダージ
etc.には及ばない。なぜリュウがあの女性に惚れるのかが全然伝わって
来ないのだ。彼女に自分と同じものを感じた、ということは説明されるのだが、
言葉だけであって、そこに感情にうったえる何かは感じ取れない。

そしてリュウの無神経さが不快。あのー、このトリオって、昨日今日
結成したわけじゃあ、ないんですよね?
なのになぜ、リュウは仲間のトラウマを言葉でえぐりまくるの?
ひどくないそれって?
仲間たちの過去を説明するならば、リュウをデリカシーゼロのアホ男に
して説明させるより他にやりようがあるでしょうに。
そして恋は盲目とはよく言うが、リュウの計画は仲間に手間と心配をかけまくり。
なにしろリュウは理性的に思考出来ないのだから。
生い立ちには同情すべき点が多数あるが、闇社会でこんなパーソナリティでは、
長生き出来そうにないぞ。かようにリュウがどうしようもない男なので、
ドラマティックなはずのラストにも感動出来ず。