読書日記PNU屋

読書の記録

藤崎慎吾「ハイドゥナン」上・下

 
オンライン書店ビーケーワン:ハイドゥナン 上2005.7早川書房\1,785オンライン書店ビーケーワン:ハイドゥナン 下\1,785

共感覚を持つ少年・伊波岳志は与那国島の巫女的存在である後間柚と
出会い、惹かれ合うが…日本には未曾有の危機が迫っていた…。
 
本書で最も面白いと思えたのは、プロローグだった。

本作と比較される設定らしき小松左京の「日本沈没」も読んでいない
私だから、SF的立ち位置がどうのなんてことはわからない。
でも単純に、物語として面白いとは思えず、読むのがしんどかった。
 
瞠目すべき部分ももちろん、ある。科学とオカルトを融合させて
みたりだとか(ISEIC理論は確かにいい)、
主人公が持つ共感覚の描写は面白い。
柚との出会いのシーンなんか、とても美しいし。
ストーン・リーダーもわくわくさせてくれる。
ただそれだけに登場人物の魅力が乏しいのは疵ではないか。
科学者が何人もぞろぞろと出て来るが、個性は感じられず、
一様に退屈に見えてしまった。
 
とくにカンダーリの部分はね、すでに荒俣宏のシム・フースイ・シリーズ
で既読だったために新味無し…初めて本書で読んだ人ならば逆に面白いと
思える部分だったのじゃないかとは、思うのだが。
 
そしてラストの諸星大二郎・某作品への酷似がいただけない。
まああちらも元ネタは神話ですからね、設定および展開かぶっちゃっても
何の不思議もないわけだけれど、それがこっちでは感傷的な××セスト
肯定的意見まで付いてしまうのだから脱力
(正直、気持ち悪くて私は受け付けられない)。

似てるにしても、後発ならば先達を超える何かが入っていないと…。
 
ラストまで読めば、ああそういうこと…と納得出来なくもないが、
岳志の弟・元が出てくる必要ってあったの?とか、
柚の兄って別にいらないんじゃん?とか、
メカの描写がこんなに詳しくなくてもいいんじゃないか
「感度良明!」とか何度も繰り返したりってのは省いていいの
じゃないのか〜メカが動き出すまでの詳細なメカニズムと人力メンテ(?)
みたいな描写が妙に細かすぎて、物語の流れをブツ切りにしちゃった
ような印象。メカフェチならば面白いの?潜水艇好きならば退屈しない?
そういうところが冗長で読みづらく思ってしまった。

p.s.神に通じる少女「柚」の名は「神」と似ているね。