読書日記PNU屋

読書の記録

I LOVE YOU

オンライン書店ビーケーワン:I love you2005.7祥伝社\1,680


「きっと恋がしたくなる」がキャッチ・フレーズの、恋をテーマとした作品集。
 
伊坂幸太郎「透明ポーラーベア」
お姉さんの元彼とばったり会ったのは、動物園だった。
作品同士がつながる趣向は短編でも健在、某ミステリーとリンクして
いる。わけがわからないけれど、なんとなくムードはよい、そんな1冊。
 
石田衣良「魔法のボタン」
魔法のボタンという、お約束とは。
いい歳した大人が恥ずかしい…と思わないではないのだが、そこが
このお話の肝でもあるのだろう。出来すぎではあるが、いい話である。
 
市川拓司「卒業写真」
かつての同級生との再会。
これはいかにもありそうな感じのお話で、くすっと微笑ましいところも
可愛らしい。
 
中田永一「百瀬、こっちを向いて」
先輩のたのみで、モテない男が百瀬と言う美女とつきあうふりを
することになり…。
これは私、あわなかった。キャラクターがいかにものベタな創りすぎて、
意外なことがほとんどないのである。過剰に卑屈な主人公にもついてゆけず。
 
中村航「突き抜けろ」
男三人の奇妙な友情。
恋がテーマというには微妙にジャンル違いな感じだが、青春物語と
しては若さとムチャクチャさがほどよくブレンドされてほろ苦い味わい
となっている。
 
本多孝好「Sidewalk Talk
別れる男女の追憶。
好きかというとまた違うのだが、安易にオチを付けないところに好感を
抱いた作品。
 
…以上読み終えて思うのは、「恋」がテーマというしばりのせいか、
「恋の始まり」を描いた作品が多かったということ。
確かに恋ははじまりのときめきが美しくて素敵なものだが、収録作の
半数がこれではどうも…。ちょっといい話としては楽しめたが。
その分、危機に頻した恋、自己完結する恋を描いた作品には好感度・大で
あった。