読書日記PNU屋

読書の記録

西尾維新「ニンギョウがニンギョウ」

オンライン書店ビーケーワン:ニンギョウがニンギョウ2005.9講談社\1,575
 

一七番目の妹のために、映画を見なければならない…。
奇妙な直感と、思いこみに満ちた悪夢のようなファンタシィ。
 
「ニンギョウのタマシイ」「タマシイの住むコドモ」「コドモは悪くないククロサ」
「ククロサに足りないニンギョウ」を収録。
 
「一七番目の妹」と内容紹介にはあったので、
何かの萌え系ゲームみたいな、兄と妹が擬似恋愛するような、
それこそ「きみとぼくの壊れた世界」みたいな話なのかなぁ、
ああいうのはあまり好きではないんだが…とあまり期待しないで
読み進めたら…、奇天烈な世界があれよあれよと展開し、
萌えは少なめ(ちょっぴり官能的な場面が無いではないが)。
これ、好みかも。
 
まるで乙一「小生物語」から現実味とユーモアを抜いたかのような、
バリー・ユアグロー「憑かれた旅人」のごとき不可思議とペーソス、
そして平山瑞穂「ラス・マンチャス通信」のごとく次々と展開する
奇妙な世界。幻想文学好きならば、見逃す手はない作品。
萌え系の挿画も一切無しの硬派なつくり。
 
それだけに、今までの「戯言」シリーズや「りすか」の可愛い系が
好きだったファンは戸惑う内容かもしれない。
変わった世界に慣れるまでの読みにくさもあることだし。
だが、ここに書かれたような悪夢の萌芽、グロテスクへの傾倒は
既刊でも見られたもので、それを抽出するとこのようになるのではないか、
と勝手に想像している。
 
私は、この物語が全て実際に見られた夢を実録したと言われても
驚かないが、このような悪夢の世界を創作で構築できるのが作家の
腕前というものなんだろうな、たぶん。
ラストは少々理が勝ちすぎている印象もあるのだが、読み終えてみれば
そういうことだったのかと納得で、めちゃくちゃ不条理な世界に見えて
伏線があったのか…と驚いてしまった。

p.s.しかし、箱入りってのはどうにかならないのかなぁ。
ハトロン紙(?)で包まなくてもいいと思う。ページ数の割に高価だし…。
ふつうでいいのだけれど。字もわざとかすれた仕様になっており、
装丁・造本に凝っているのはわかるが読みにくいぞー。