読書日記PNU屋

読書の記録

津原泰水「赤い竪琴」

オンライン書店ビーケーワン:赤い竪琴2005.1集英社\1,785


女が、男に出会った。そして恋がはじまる。
 
つかみがすごくて、凛とした彼女にニヒルでダークな男、
そしてなぜ彼女がそれを持っているのか?などなど、気付けば
作中世界にのめり込んでいってしまう。
ああ、この作品についてはあらすじを多くは記したくない。
芳醇な味わい持つ美しすぎる文体で、ゆるゆると恋物語
ひもとかれていくのをぜひ、読者それぞれが体感してみてほしい。
 
ガール・ミーツ・ボーイは文学の主要テーマでもあって、多くの
恋愛小説が世に出ている。本作もあらすじだけ乱暴に語ってしまえば、
いわゆる感動恋愛モノだと言えるかもしれない。
だが妖しく輝く魅力ある文章で語られるうち、読者は必ずや酔わされて
しまうことと思う。
 
内容について少しだけふれると、これは大人同士の恋愛である。
大人同士ではあるが、そこに打算のような醜さ、汚さはない。
男と女の正々堂々一騎打ちなのである。潔さに打たれ、弱さにほろりと
来る。そのさじ加減が素敵だ。そして時代を越えて重なる愛のかたちが
胸をゆさぶらずにおかない。
 
恋愛というとすぐにカラダの関係に走ることが多いこの時代に、
本書の彼と彼女はストイックでプラトニックだ。それにはもちろん
理由があるのだが、刹那的に肉体を求めないからこそ生まれいずる
絆があるし、わきまえている二人だからこそ気持ちが臨界点を
超えたときのせつなさといったらたまらないのだ。
 
若い男女の青い恋を読み飽きた大人にぜひとも手渡したい、
抑えた情熱がここにある。