中島たい子「漢方小説」
胃の不調、動悸…西洋医学ではなんでもないと言われたけど、
心療内科はイヤ!なヒロインは、漢方医学に希望をたくすことに。
いきなり救急車!な出だしのテンポは素晴らしい。
佐々木倫子の名作漫画「おたんこナース」を彷彿とさせるユーモラス
かつスピード感ある描写に惹きつけられた。
だが、そのあとがなぁ。
「ら」抜き表現バリバリで、いかにも今時の小説という印象。
思ったほど漢方が出ないのねぇ。
軽やかな描写は好ましいと思うが、核が弱い小説なのではないかと。
たとえば女のプライドゆえ、心療内科には行きたくないというヒロイン。
そのかたくなさを解くのが漢方かというと、その辺は茫洋としていて
煙に巻かれたような…?
まあ本人がそれで良ければいいんだけれど、医療費がどうこう言うよりか、
事実をさておいて本人の願望に沿う診断を求めてドクター・ショッピングする
患者って、医療側からするととっても迷惑なんだよね。
病院辞めた私の言うスジじゃないかもだけど。
ヒロインが気に入らなかったせいか、どうも楽しめず。
症状の重い友人に会って自分はあの人に比べればたいしたことないなって
思うのはいかがなものか。正直な気分としてそう表してしまうのだろうけど、
あまり気持ちの良い考えではないし…。
冒頭のドクター・ショッピングが響いてか、私にはどうしてもヒロインが
自己中心的で甘えているようにしか見えないのだ。これが十九、はたちなら
大目に見ようがもう31歳なのでしょ?それでこんななのアナタ?
まあいいけどさ…。ヒロインに都合良すぎる展開もついていけず。
三十路過ぎても可愛くか弱いヒロインに共感出来るか否かが、
本書を気に入るかどうかの分かれ目となりそう。私は自分が暇人なので、
同類への嫌悪なのか、自分探しするほど暇なやつが好きではない。
仕事もそこそこ有能なのに条件に恵まれなくって、
気のおけない友人がいるけどストレスで神経をいためちゃうくらい繊細なワタシ、
でも認めたくないほど意地はって生きてるの♪
というのがなんだか私の癇にさわってしまったのだ…。
p.s.救急車のオレンジの毛布って、ほんとにクサイのだよね。
救急車同乗実習で鼻が曲がるかと思ったことがあるよ。