川上弘美「古道具 中野商店」
中野さんというちょっぴり変わったおじさんが店主の古道具屋で
バイトするヒトミは、バイト仲間のタケオと親しくなるが。
モノと恋愛と変わった中高年の物語。
ふんふん、のんびりライトな話なのね〜と思った私が甘かった。
こりゃあ恐ろしい本である。
現代ッコのディスコミュニケーションから大人のエゴイズムまで、
少々歪んだ世界をそれでもいいじゃないの、とさらり流してゆく。
ヒトミとタケオの、人間苦手なの…同士の付き合いは不器用で
危なっかしくて、はらはらしてしまう。
タケオのどこがよいのかいまひとつ私にはわからないんだけど。
いじめられるほど繊細なところだろうか?
風変わりだろうとへいちゃらで生きていけるものよ、という
力強いメッセージを発信しているようにも思うし、
いろんなことを飲み込み受け止めるアバウトさを持つ中野商店主人の
鷹揚さも魅力か。
隠しテーマは“女の性”かもしれないなぁと思わせる本であった。