読書日記PNU屋

読書の記録

高田侑「うなぎ鬼」

オンライン書店ビーケーワン:うなぎ鬼2005.6新潮社\1,785

 
借金苦から、怪しい使い走りをやらされるようになった男。
うなぎの養殖場がある「黒牟」なる町に、異様な恐怖感を覚えるのだが…。
 
オンライン書店ビーケーワン:裂けた瞳2004.1幻冬舎\1,680
この著者の前作「裂けた瞳」が私はとても気に入らなかった。
身勝手な男が自分を悲劇のヒーロー化しているようで気分が
悪かったのである。しかし。
ストーリーは破綻しているものの超常現象の描写に目を惹くところがあり、
今回はどうだろうかと本作を読んでみたのである。
 
なんだ、前作よりずっと良いじゃないか。相変わらず前半と後半で
ムードの変調を来すところがついて行きがたいけれど、不気味なイメージで
恐怖盛り上げるところがいい。
 
ただ、今回もバカ男が主人公なのねぇ…「裂けた瞳」の主人公も見下げ
果てた阿呆だったけれど、今回のバカさ加減も相当なモノ。
ホラー・サスペンスで賢い主人公であればみすみす危険な目にも遭いがたい
はずなので、バカ主人公というのは必須なのかもしれないが…。
借金がふくれあがるにまかせるところといい、
人間を外見でキャアキャア怖がるガキっぽいところといい、
主人公に全く同情も感情移入も出来ない。
そうすると突き放して俯瞰で読むことになるので、怖くなくなる。
 
最も怖いところは、猟奇殺人より何より、こんな善良ぶった主人公が
あんな行為をなし得るという人間の脆さかもしれない。

p.s.うなぎといえばいしいしんじ「ポーの話」が同じく肉食テーマを
扱っていて、そちらの壮大な展開が好みだったので、どうもこちらが
こぢんまりとして感じられたのかもしれない。
オンライン書店ビーケーワン:ポーの話2005.5新潮社\1,890