読書日記PNU屋

読書の記録

あさのあつこ「福音の少年」

オンライン書店ビーケーワン:福音の少年2005.7角川書店\1,470


妖しく美しい声を持つ少年・柏木と明帆は互いの隠し持つ心の闇に
気づき、惹かれ合う。一方、二人と関係の深い少女・藍子が謎の死を遂げ、
二人は彼女の死を調べ始めるが。
 
「No.6」は好みだったのだが、「透明な旅路と」はピンと来ず。
本作もまた、私にとってはピンと来ないものだった。
 
二人の少年の心の闇は魅力的だけれど、そこへ少女が加わったことで
急によくある話に思えてしまうのだ。わざと狙った効果なのだろうか、
彼らの内面をサラリと流し、踏み込んだ描写がないので文中にもある
ように“理由もわからず”“なんとなく”アンビバレントなキャラクター
に付き合っていかねばならない、そいつはしんどいことだ。
私には、明帆も藍子も柏木もわからなかった。殺人者がTVで報道されるとき、
いつかやると思ってましたなんてのは少数派で、どちらかと言えば
大人しくて真面目だったのに何故?みたいな報道の方が多いような気がする。
だから彼らが持つ闇は人間が普遍的に持っているものだと思うのだけど、
いかが?子供時代はとんがっているけれど、大人になるにつれて自分や
世間との折り合いを付けていくもんなのではないのかな。