読書日記PNU屋

読書の記録

新津きよみ「スパイラル・エイジ」

オンライン書店ビーケーワン:スパイラル・エイジ2005.5講談社\1,575


薬剤師の美樹は20年以上も生きる金魚・ギンちゃんを飼っていた。
そこへ高校時代の級友・イワが訪ねてくるが彼女はワケありで?!
そこへ美樹の元・不倫相手の妻である暁子もやって来て、もう大変!
 
読んでいるときはどうなっちゃうの?とワクワクして楽しかったが、
読み終えたら印象が薄いかなぁ?
読書中は面白かったし、あっけないようでこれしかないだろうな、
良識派なラストもきれいにオチているのだが。
 
不満は、ここを切り込んでくれたらもっともっと面白くなったのに
と思える箇所をサラリと流してしまうこと。たとえば義母の美に対する執着、
美樹の共犯関係、イワの内面など…いくらでもどろどろするポイントがあり、
そこにこだわるとおそらく桐野夏生とか明野照葉みたいな怨念うずまく
作品になっただろうが、本作は絶妙なバランス感覚でそれらをあっさりと
いなしていく。そこが見事でもあり、不満でもあり。
 
読み終えて、同胞愛に満ちた作品であると思った。同性だから、
という理由でそこまで相手に肩入れ出来るものだろうか。
ずるかったり卑怯であったりしても善人しか出て来ないところが、
本書の後味の良さ/裏を返せば物足りなさの原因かもしれない。