読書日記PNU屋

読書の記録

ジョー・ウォルトン「アゴールニンズ」

オンライン書店ビーケーワン:アゴールニンズ2005.6早川書房\1,995


ヴィクトリア朝を模した世界。ただし、出てくるのは全て竜である。
ヴィクトリア時代っぽい身分制と宗教観を持つドラゴン・ワールド
「ティアマト国」。

父の死に、うら若きドラゴンの姉妹・セレンドラとヘイナーはそれぞれ違う家に
引き取られていく。互いに苦労しつつ、相手を思いやる姉妹の運命やいかに?
 
さいころから爬虫類や恐竜が大好きで、「エルマーとりゅう」の
一連のシリーズをを読んでは
オンライン書店ビーケーワン:エルマーのぼうけんGannett Ruth Stiles2000.2\683
竜に感情移入し、ウルトラマンを見ては怪獣が殺されるので泣く子供だった。
人間よりはドラゴンに生まれたかったという私にはたまらない1冊。
ドラゴンにとことんこだわった作りで、人物紹介も登場「竜物」紹介になっている
くらいだ。
 
ヴィクトリア朝には思い入れや興味がなんにもない私だったが、
読み進めればキャラクターの魅力ですいすいと作中世界に引きこまれていった。
物語の中心となるいきいきとしたセレンドラの魅力は言うまでもなく、
微妙に個性の異なる同腹の妹ヘイナーも良いし、子竜たちも可愛いし、
生真面目なペンや善良で苦労人のフェリン、若々しいエイヴァンや
ひょうひょうとしたシャーも素敵だ。そして忘れてはならないのが
嫌われ者のフレルトやデヴラクだろう。彼らはけして好かれないだろうが、
彼らのおかげで物語は躍動感を持ち、引き締まった。
 
ストーリーはクラシックで典型的に思えるかもしれない。
人によっては都合良いとすら感じるだろう。シンプルでストレートな
恋愛&貴族のお家騒動ものだが、竜世界の風俗や習性(ここら辺は紹介して
しまうと興がそがれるので、ぜひ読んで確かめてみて!!)が面白く、
味わいを深めてフレッシュな小説になった。
すべてのドラゴン好きに強力におすすめ。

p.s.ティアマト(ティアマットもしくはティアマトーとも呼ばれる)は
伝説の巨竜神