読書日記PNU屋

読書の記録

佐藤友哉「子供たち怒る怒る怒る」

オンライン書店ビーケーワン:子供たち怒る怒る怒る新潮社\1,680


子供だからって、抑圧しないでほしい。過激な子供たちが爆発する短編集。 
本書をおすすめしたいのは次の方々だ。
せつない系でない乙一作品(例:「GOTH」)のドライ&ブラックかげんが
たまらない人。
大石圭作品(例:「処刑列車」)のような、グロテスクな暴力描写が好みの人。
舞城王太郎作品(例:「阿修羅ガール」)みたいな残酷と不条理が読みたい人。
西尾維新作品(例:きみとぼくの壊れた世界)のように、妹萌え自己満足の
閉じた世界が好きな人。
 
佐藤友哉作品はこれが初な私。残念ながら好みではなかったのだよ。
友成純一が好きなくらいなんで、死と暴力読書は得意なんだけれど…
レイプとかタブーにふれるセックス描写についていけなかった。
この辺は好みがすごく分かれるところだと思われる。
 
閉じた世界での希望と絶望をコミカルに描く「大洪水の小さな家」、
津原泰水ばりの背徳の美描く「死体と、」はすごく好みで、
ああこれは面白い本に出会ったものだ!とうれしい気持ちになったのだけど。
 
「慾望」のタチキリ具合に拍子抜けし、表題作「子供たち怒る怒る怒る」には呆然。
う〜ん。これって、舞台がKなわけですよね。なぜKでなければあかんかった
のでしょう。件の伝説がある地だから?現実事件へのオマージュで?
せっかくの怒りもSEX描写の陰惨さの前にはタジタジな印象。
子供たちの心情描写に光るところがあるだけに、現実によりかかるかのごとき
設定が残念。
 
「生まれてきてくれてありがとう!」はタイトルを裏切るネガティヴな話…
に見えた。私には。「大洪水の〜」と似て非なるような読後感。
 
「リカちゃん人間」は悪夢のような話。でも、これがフィクションといいきれない
事件が現実に次々起きているからなぁ。やりすぎではあるが、
不思議なカタルシスもたらす作品だった。
 
…読み終えて思うのは、凄惨な暴力や、世の無情に自発的精神改変で
対応するテーマっていうのは、もうすでに’90年代に漫画界では
神田森莉が書き尽くしているよなぁということ。
楳図かずお神の左手悪魔の右手」だとか、活字界でも綾辻行人「殺人者」で
理由無き暴虐は描き尽くされていて、残虐描写ではもはや新しさは無い。
そこにアブノーマルSEXをからめたところが新機軸?
だとしたら私の好みでは、ないなぁ…。