読書日記PNU屋

読書の記録

小路幸也「HEARTBEAT」

オンライン書店ビーケーワン:HEARTBEAT2005.4東京創元社\1,575


かつて同級生だったヤオと、10年前の約束を果たすために、
闇の世界から日本に戻った委員長。そして委員長に協力する巡矢。
一方、資産家の跡取りである小学生・ユーリの住む屋敷では
幽霊騒ぎが起き、同級生で友人のエミィとハンマはユーリを
助けようと頑張るのだが。
 
不思議で哀しいのに、どこかあたたかい。
これは素敵な本だ。
伊坂幸太郎の作風が好きな人にはぜひおすすめしたい。
 
今までの小路作品では、どこか不満なところが必ずあったのだが
(「Q.O.L.」では虐待シーンがえぐかったり、
「パルプタウン」シリーズでは途中まで抜群に面白いのにラストで
拍子抜けしたり、「そこへ届くのは僕たちの声」ではいい話
なんだけど展開がまだるっこしかったり)、
本書のテンポの良さと感動の盛り込み方には脱帽。
けなしどころがないですよ。ヤオの魅力がさほど…だとか、
ミステリーとしては謎が弱めというのはあるけれど、
そんな些細なことは問題にならないくらい面白いのでツッコミは
なしで行きたい。
 
優等生なのにかなりハードボイルドな経験を積んできた委員長と、
巡矢が素敵だ。とくに巡矢。彼が不敵で頼れる男であればあるほど、
ラストの哀切が増すのだー。殿方ならばいざ知らず、この魅力に
抗しきれる婦女子はいないのではないか、と思われる。
委員長の能力の謎が明かされるとき、あなたは泣いてしまうかもしれない。
 
本作を読んで思ったことは、この著者は子供を描くのが上手いなあ
ということ。魅力的で、背伸びしすぎず幼すぎず、真っ直ぐで
頑張る子達が素晴らしい。ブレイク必至の1冊だ。