読書日記PNU屋

読書の記録

道尾秀介「背の眼」

オンライン書店ビーケーワン:背の眼2005.1幻冬舎\1,890

作家・道尾は天狗を祀る村・白峠村に旅行した際、
「レエ…オグロアラダ…ロゴ」という呪文のような声を
耳にして逃げ帰り、友人で心霊探究家の真備に相談する。
白峠村では連続子供行方不明事件が起こり、そしてそこでは
背中に目玉が写り込んだ心霊写真が撮られていたのだった。
真備と道尾はこの謎を解こうと奮戦するが。
 
前半のコミカルで適度にほのぼのしているような展開は
なかなか好みだったので、期待したのであるが…。
登場人物同士が楽しそうだし、確かに怪奇現象の描写は
素敵である。だが、動機が私には納得いかないのだよね。
探偵の説明も、こじつけに感じられる。部分部分はよいのに、
通して読むとアラが目立つという印象。
 
冴えない小説家と、その友人の自信満々な心霊探究家。
あれ、それってどっかで見たような…?
人気作品へのオマージュと見るべきかパクリなのかで論争が
あったという噂の作品。確かに人物も似ているが、
人物像よりも一番イタイのはクライマックスである。
解決場面がそっくりなところはいただけない。
決めぜりふなんかがあんまり似てるんでがっくり
してしまった。本家ほどの濃厚な世界を構築出来ても
いないしなぁ。それは新人だから仕方ないかもしれないけれど…。
 
私が本作を評価しないのは、まず無駄な描写が多いこと。
寄り道が多くて、これはホラー&サスペンスじゃなくて
架空の村旅行記かと。村の名物やら何やらの描写が、
ムードを盛り上げる方にではなく、ムードを散漫にして
しまう方へ行っている。あと関係ないはずの人物の描写を
やりすぎて、そうなんだってバレバレではないのかな。
あからさますぎる。もっと上手く騙してくれないと、
世界に酔うことは出来ない。
 
あとは着想がデリカシーないと思う。
いくらホラー&サスペンス狙いとはいえ、幼い人の無神経な
事件への巻き込み方は無思慮極まるし、障害のある人を
ことさらグロテスクに演出するのは趣味がよろしくないん
じゃないの?そこまでする必要のあるプロットなのこれは?
読後感悪すぎ。ついていけん。私だったら、そんな急に
あっさりと日常に戻れないよ。結局、探偵&書記にとって
事件なんて所詮他人事ってことかしら。