垣根涼介「君たちに明日はない」
君たちに明日はない 垣根 涼介 新潮社 2005-04-01 asin:4104750018 Amazonで詳しく見る |
リストラをすすめる職につく真介は、とある会社の面接で勝ち気な陽子に出会い、好意を抱く。辞めさせる者と辞める者のせめぎあい、そして2人の恋の行方は。
いつもの垣根作品を踏襲しつつ、ライトに読める物語である(いつもの垣根作品というのは、ほどほどにエロティックであるとか、恋愛モノはきわどいセックス描写でごまかしてはいるがいつも純愛だとか、メシの描写が美味そうとか車・音楽への
こだわりを感じるとかそういったことである)。
小ネタが連綿と続き、途中でややダレを感じる。真介&陽子の恋愛でストーリーをつないではいるが、一人ひとりのリストラ対象者にふみこまずに流していくので、どこか物足りなさが残る。
リストラ業にも恋愛にも筆をさくせいなのか、どっちつかずになってしまって残念。リストラという重い内容をライトに読ませる工夫なんだろうか。恋愛にしても、真介のトラウマ設定があまり生かされていないように思える。
いろいろ細かい不満は残るにしても、かっこつけていながらどこかピュアな部分をむき出しで残す真介は可愛らしくにくめないキャラクターだし、だからこそ彼がリストラ対象者にかつての同級生を見出した時の行動が見所となる。
深みはないが、ライトなエンタメならばこれでいいのかもしれないな。