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読書の記録

遠藤秀紀「パンダの死体はよみがえる」

パンダの死体はよみがえる (ちくま新書)パンダの死体はよみがえる (ちくま新書)
遠藤 秀紀

筑摩書房 2005-02-08
asin:4480062203

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 動物遺体が語りかけてくる無言の声を聞く学者。それが著者である。
 死体ではなく、遺体と呼ぶことからも、動物標本にかける情熱が知れるというもの。
あまりにも情熱がすごくて、動物学・解剖学に興味がない読者はややひいてしまうかもしれないが、パンダの手が笹をにぎるメカニズムが解剖によって明かされていくプロセスにはわくわくするし、忠犬ハチ公の知られざるエピソードも興味深く、動物のからだの仕組みに関心のある読者にはたまらなく面白い本なのではないだろうか。
 遺体を無目的に収集する、と冒頭で読んだときは意味がわからず首をひねったものだが、読み終えてみれば納得。著者の提唱する「遺体科学」は人体解剖ですら3体で音を
あげた私にはとても気力・体力・頭脳不足でとても出来そうにない学問だが、その重要性は知ったつもりだ。 
「おわりに」の、妻への謝辞も感動的だった。