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読書の記録

東直己「義八郎商店街」

義八郎商店街義八郎商店街
東 直己

双葉社 2005-02-16
asin:4575235156

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 地上げを住民の力で撃退した武闘派商店街。そこにすむ住人達は、ひとりの不思議なホームレスに護られていた。コミカルでいて、ほんのりせつない連作短編集。
 
 う〜ん、ライトで読みやすいのだがこれは私には合わなかった…。商店街のいきいきとした老人達は好きなんだけど、そこへ義八郎が登場するとなんか醒めてしまって。あまりに義八郎の存在がファンタジーにすぎるからついていけないのかもしれない。リアルな部分と、超現実の部分のすりあわせが良くないというか、バランスがいまいちに感じられてしまったのだ。
 「街角の恋」のように、キャラの立ったじいさんばあさん達に密着した話は面白く読めたのだが、スーパーナチュラルな設定の話には違和感をおぼえてしまった。別にファンタジーがいけないってわけじゃないよ、私ファンタシィもSFもホラーも好きだし。ただ、なんだか扱いが半端だなぁと、この設定ならもっと生かしようがあるんじゃないの?という不満があるってこと。
 「座敷童騒動」の幼稚性であるとか、「おれおれ詐欺」の正義の名のもとにおける暴力、「義八郎村ラジオ」のバカ主婦が考えた脳みそゼロな妄想などは正直不快に思ったので、老人達のキャラクターには愛着を感じるけれど、満足度は高くない。
 読んでいてしっくりこなかった義八郎と老人達を力業ですりあわせたのが終章「消滅」で、強引に話を感動方向に持っていきたいのはわかるけれど、これはないでしょ。
なんだかサプライズって言うよりちぐはぐだなぁ、今までの話に矛盾が生じるってば。
 アキ婆のような魅力的なキャラクターをせっかく生み出しておきながら、影であったはずの存在が主役を食って終わるのってどうよ。リアルよりのコメディなのか、それともベタなファンタジーなのか、どちらかに統一してほしかった気がした。