ポール・ギャリコ「セシルの魔法の友だち」
セシルの魔法の友だち (世界傑作童話シリーズ) ポール ギャリコ Paul Gallico 野の 水生 福音館書店 2005-02 asin:4834006409 Amazonで詳しく見る |
花農場の娘、セシルの愛するジャン=ピエールはアビシニアンてんじくねずみ。賢く可愛いおともだち、いやむしろ彼は恋人…。
可愛いけれど騒動のタネとなってしまうジャン=ピエールに、セシルはいつもドキドキはらはら。
タイトル通り可愛らしい魔法が花開いたり、ジャン=ピエールがさらわれてしまったり、間違った飛行機に乗せられたり…とセシルのヒヤヒヤは続く。
秀逸なのがペットショップでセシルがジャン=ピエールと出会う場面。私のものではないけれど、どこか心通じ合うような感覚のする売り物の動物…。幼いころペットショップで悶えたことのある身にはしみすぎるシチュエーションであるのだった。
「愛してる!」なんて台詞が出て来てドキリともするが、恋愛というよりも好きが高じて大好きになった、という感じなので可愛らしいのである。
最初8歳だったセシルも、物語とともに素敵なレディに成長していくので、そこも見所。
大人はずるい、わかってくれないと何度となく思うセシルであるが、彼女が両親から大事にされていることは明白だ。可愛い少女がてんじくねずみを愛し、その少女が家族から深く愛される。読む者の心をほんのりあたたかくしてくれる小説だ。
ただ、大人のすすけた心で読んでしまうとちと出来すぎな感が否めない。出来ればこんな素敵な可愛らしい物語を、こどものうちに素直な心で読みたかった、それが本書に対する唯一の不満だろうか。
魔法とは言うものの、第一編以外は魔法がなくても大丈夫な展開なので、ファンタシィとしてではなく動物と少女の奇想天外冒険友情記として読んではいかがだろうか。