稲川淳二「稲川淳二の怖すぎる話 よそから来た男」
2005.6竹書房\580
怪談のベテランによる新作怪談本!オーソドックスな心霊譚から
サイコ体験まで、様々な味わいの体験談をリアルな語り口で紹介する。
一時期過去の体験をくり返し書いたりしてマンネリだったけれど、
伝聞体験も扱うようになってから怪談を語る世代や起きた時代、
そして場所・地域の幅が広がり(当たり前か?)再びワクワク
させてくれるようになった。
スタンダードな因果応報系の話と、オチがないけど不気味で怖い
不条理な話がほどよくブレンドされていて飽きさせない。
怪談も面白いのだけど、ところどころに挿入された「恐怖コラム」が
これまた良い!日常のヒヤリと不気味な瞬間、背筋凍る出来事が淡々と
書かれていて恐怖を煽ってくれる!これは霊感とは関係なく、
誰にでもありうる出来事だから、恐怖が倍加しているのかもしれない。
坂牧良太「幽霊より怖い話」
2005.5竹書房\620
怪奇体験短編集。映像をノヴェライズしたものらしいが、
結末は必ずしも一致しなかったりするらしい。本書オリジナル短編もあり。
「女優ストーカー」「袋」「妄想監禁」「娘が喋れなくなった理由」を
収録している。巻頭には映像から採られた写真も掲載されている。
でも…う〜ん、私には怖くなかったんだなぁ…。残念。
ひとつには、ホラーによくあるネタであるということ、そして異常・サイコ
体験談ではすさまじいほどの衝撃を与えてくれる「東京伝説」シリーズと
比べると、どうしても同じフィールドだけあって本書を薄く感じてしまうと
いうことだ。
一応体験を小説化というフレコミなのだが…。主人公たちが、
みんな自業自得だったりするのでそれで怖さを感じないのかもしれない。
そんなに無防備に世の中を信じ切っている主人公たちこそ怖いような気もする。
同じく映像を小説化した「念珠」でも感じたことだけれど、映像をそのまま
文字に置き換えるだけでは、面白くないのだよね。小説にするからには、
小説の手法を使って文章で世界を組み立ててくれないと。
それは贅沢な望みなのかな?