二階堂黎人「鬼蟻村マジック」
鬼蟻村マジック 二階堂黎人 原書房 2008-07-23 asin:4562041706 Amazonで詳しく見る |
職場の美女に頼まれ、彼女の実家で謎解きをすることになった水野サトルだが、旧家では陰惨な怨念が渦巻いており、ついに死者が…。
名探偵水野サトルシリーズである。
本書は戦前の謎に加え密室殺人などの現代の謎と、謎が盛りだくさん。その割りに、歯ごたえがないのはなぜなんだろうか。
私はそこそこミステリー好きでよく読んでいる癖に、しばしば迷ワトソン的誤推理をやらかすのだけれど、珍しく本書では推理がズバリ当たった。それは本書がミステリーとしてシンプルだからかもしれないし、推理小説として読者にフェアなだけの手がかりを提示しているからかもしれない。
謎が解けてからも複雑な人間関係で彩りを添えてはいるのだが、私ごときに解けるほど犯人があからさまにほのめかされるのは、やや不満。
しかしサトルも30か、そろそろ美青年キャラでいくのも厳しい歳になってきたな…今まで通り、永遠の少年みたいなキャラだけれど…。
最後にこれは推理の本質には関係ない些末なことだが、サトルが血液型占いを語るのには個人的に幻滅。サトルは多趣味なキャラなのだし、知識として知ってるのはナチュラルなことなんだけれど、血液型性格占いを三姉妹のキャラ描写の助けにするこたぁないと思うのよ。
血液型占いなんてアジア限定の迷信なのに日本では大人気だから、信じない自分にはけったくそ悪いし、これが常識として扱われる社会に身震いするわ。
追記:ミステリマニアにはなれない
この作品、ネットを巡ったら評判悪くないのな。かっちりまとまってはいるけれど、読み物としては私的に「金田一少年の事件簿」(漫画版でも小説版でも!)と大差ないと感じた。形式や流儀にトリックをきれいにハメる小説を追究するのがミステリマニアならば、物語・小説の面白さを追求する自分はマニアにはなれないんだろう。