長嶋有「ぼくは落ち着きがない」
ぼくは落ち着きがない 長嶋有 光文社 2008-06-20 asin:4334926118 Amazonで詳しく見る |
図書部に所属する本が好きな女の子の、高校生活物語。
タイトルには「ぼく」とあるけれど、主人公は女の子だ。
しかし、文芸部でもなく各クラスごとの図書委員でもなく図書部というのは、ほんとにあるんだろうか。作中世界では図書部が当たり前の存在のようだが…。
単行本のオビでは、青春文学の金字塔・山田詠美「ぼくは勉強ができない」が引き合いに出されていたが、私は本書からあれほどの鮮烈な印象は受けなかった。恋を積極的にするほど他人と関わることもなく、まったりぼんやりした高校生の部活ライフが綴られるゆえなのか、私はこの小説に関心を抱けなかったのだ。
ヒロインがびっくりするほど人の名前を覚えていないなど、自分が一番大切で他人にまで目が向かない、人間関係の淡白なイマドキの若い人は巧く描けていると思うが、それと物語が面白いかどうかは別問題である。予想通りには進まない展開も、見方によってはクールかもしれないが自分には退屈でしかなく、学校裏サイトや不登校などの扱いも通り一遍に過ぎるように思えた。
p.s.読書好きな若人の物語だったら、桜庭一樹「青年のための読書クラブ」の方が私は好きだな。