帰って来た!
昨日の新刊情報にびっくり。久しぶりに、あの作家が帰って来た!これは読まねば。「建築屍材」以来ずっと気になっていたのだ。
門前典之「建築屍材」
建築屍材 門前 典之 東京創元社 2001-09-29 asin:4488023568 Amazonで詳しく見る |
建設中のビルに入り込んだ男が見たものは、ブルーシートに包まれたバラバラ死体であった!消える人、消える死体と謎かけたっぷりの本格推理。
暇人の主人公が名古屋にやって来て難事件に出くわし、変人の製図屋に巻き込まれて事件解決にかかわっていく。建設会社勤務の著者が書くだけあって、いわゆる「館モノ」とはまた違い、ものすごく建築の内側に言及している。それはもう、建築に興味がそれほど無い素人が読むとちょっと辟易してしまうくらいだ。まあ、専門知識がトリックにもかかわってくるのはその道のプロの強みだろう。壁に死体を塗り込むことは可能か云々、のウンチクも良かった。
明らかに、物足りなさはある。文章のテンポが良くないことや、人物の台詞の時代めいた言い回し、これは意識的な狙いらしいが謎解き至上主義で人物の造形・描写が二の次なところ、動機が納得しがたいところ…どれもこれも不満のタネ、疵である。それでも、新人でありながら不可能犯罪をたくさん盛り込んでみせ、やや無理目とはいえサプライズある決着をつけてみせたこと、そのあふれる本格魂に敬意を表したい。