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読書の記録

薬丸岳「虚夢」

虚夢虚夢
薬丸 岳

講談社 2008-05-23
asin:4062147416

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 通り魔に娘を奪われた夫婦。殺人犯は精神鑑定の結果、心神喪失状態であるとされる。数年後、犯人を見たと電話が…復讐サスペンス。
 この著者はデビュー以来、難しい社会的なテーマを敢えて取り上げてきたと思う。そのチャレンジングスピリットは評価されるべきだろうが、さて本作品を小説の出来から見た場合、いろいろと不満がある。展開上仕方ないことではあるが、主役に魅力が乏しい。まず人ありきではなくて、プロットに沿わせるための書き割りのようだ。
 そして、精神疾患の描かれ方にぬぐいきれぬ違和感を感じ(絶対にありえないとは言えないが)、或る人の病態が腑に落ちないと思っていたら、そういうことであったという。それだけならばまだしも、テーマ(販促のオビやあらすじ紹介から、こっちが勝手にテーマだと思い込んでいただけだが)から逸れていく。なにこの二時間サスペンスドラマ的展開…私は本書を楽しむことに失敗した。
 フィクション度は強いが前作闇の底の方が面白かったなあ。

p.s.北海道のキャバクラ恐るべし。