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読書の記録

高田侑「フェイバリット」

フェイバリットフェイバリット
高田 侑

新潮社 2008-03
asin:4104768022

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 もうすぐ30、求職中のヒロインの恋と日常連作集。

 や、驚いた。なにしろ今までが「裂けた瞳」裂けた瞳 (幻冬舎文庫 た 38-1)とか「うなぎ鬼」うなぎ鬼みたいな後味悪いサスペンスホラー作品だったでしょう、だからこんな(フツーな、軽妙な、ありふれた、たわいない)作風もあるとは知らなかった。ケータイ小説として発信されていたそうで、道理で、あとに何も残らぬライトさ加減が腑に落ちた。


 あくまで私にはだけれど、このヒロインと恋人、どうしても30の入り口に立った人間とは思えないんだな。二十代っぽいような気がする。それに、二人の交際が、もうまた。今時の中高生の方が、もっと抜き差しならない恋愛しているのでは。別に濡れ場を書いてほしいではないが、あまりにままごとっぽいように感じる。


 こういったタイプの小説にはありがちだが、都合のよさもちょっと気になった(ケータイ小説だからかもなんだけど、物語がトントン拍子に進むのでヒロインが悩みそうになってもすんなり解決すんのよね。現実もこんなにスムーズだったらいいね、って願望小説なのかもね)。


 恋人がムンプスにかかるシーンがあるのだが、成人男性がこれにかかると男性不妊の原因となるなど後遺症が心配される。鳥インフルエンザと比べて楽観できる病ではないのに、顔貌がユーモラスという描写でさらっと流してしまうのが疑問。いやほんと、のんきに結婚とか悩んでいる場合じゃないでしょ?ヒロイン、子供好きみたいだし。



p.s.著作権協会(JASRAC)に金を払わず超ヒット流行歌を作中で使ってみせるところに感心した。