読書日記PNU屋

読書の記録

馳星周「約束の地で」

約束の地で約束の地で
馳 星周

集英社 2007-09
asin:4087748782

Amazonで詳しく見る


 幸せになりたいけれど…北の大地に展開する人間模様連作集。

 北海道取材を経て創られたためか、方言が多用されていて雰囲気のある作品だ。各章ごとに内容に合ったイメージ写真も載っていて、凝ったつくり。
「ちりちりと…」久々に対面する父と子。冒頭なせいもあるけれど、なかなか作中世界に入りこめず、読むのに苦労した。あまりにしょっぱい設定のせいだろうか。
「みゃあ、みゃあ、みゃあ」猫ばかりを溺愛する老母に娘は…。田舎の息苦しさがよくにじみ出た作品。作者が犬好きなのは広く知られているが、猫はお嫌いなんだろうか。
「世界の終わり」足を押し売りされた少年は、愛犬と二人…。美しい幼稚な全能感がよく表れていて、悲惨ながら不思議な透明感がある。犬の描写が非常に生き生きしていて、いい。さすが犬好きという感じ。
「雪は降る」男と女の悲しいドライブ。これは好きだなあ。悲惨は悲惨なんだけれども、どこかあたたかさ残る感覚。
「青柳町こそ悲しけれ」夫から暴力をふるわれる妻の選択は…。ここにも犬が出てくるが扱いはえらく違う。チワワはお好きじゃないのかしら