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読書の記録

沼田まほかる「猫鳴り」

猫鳴り猫鳴り
沼田 まほかる

双葉社 2007-08
asin:457523589X

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 猫と人と命の物語三編を収録。
 化けた。2作目にして、既にそう思わされた。そして、これが3作目。恐ろしい新人もいたものである。
 2作目でおそらく多くの人が思っただろうこと…この作家、無理にサスペンスミステリーにしないでふつうの小説描いた方がいいんじゃない?…の通りになって、エンターテイメントというよりは随分と純文学よりな小説となっている。もしも本作品が今年の芥川賞候補作だと言われたら、きっと信じてしまうだろう。受賞作と言われたって信じてしまうかもしれない。
 作中に漂うどこか不安なアトモスフィアがこの小説の持ち味だろう。二編目だけちょっと浮いた…というか異質なトーンとなっているが、猫にいろいろなものを仮託して見る人の姿を描いた一編目と、老猫との暮らしを切々と描いた三編目はしみじみと良かった。
 単に評価が高くないのは私好みでないというだけである。細かな謎が釈然としないし。

p.s.小説とノンフィクションを比べるのは無粋だが、私は今のところこれ猫にかまけてに勝る猫との別れ本を読んだことがない。