西澤保彦「収穫祭」
収穫祭 西澤 保彦 幻冬舎 2007-07 asin:4344013484 Amazonで詳しく見る |
小さな集落で起こった大量殺人事件。生き残りの六人は、それぞれ数奇な運命をたどるが…。
605ページ読んできて、このラストに絶望した!いや、第一部を読んでいる時は面白くて、これは傑作かもしれないぞと思ったものだが。
田舎の一日にして起きた大量殺人というキーワードで、ついつい実在したT山30人殺しを想起し、そういう展開を期待したのがよくなかったか。田舎に生きる退屈と閉鎖性、息苦しい人間関係は実在の事件の影響を感じるが、本書の大半はミステリーというより倒錯した恋愛悲喜劇だろう。
二階堂黎人「奇跡島の不思議」でも私は同じように思ったのだが、ひとりのファム・ファタルに男どもが振り回される話が好きではないしついていけない。エロ嫌いな私にさらに試練が!これ、どんどんエロくなっていくんですけどー。性が動機にも関わってくるからはずすわけにはいかないだろうが、エロ部分を抜いたら半分くらいのページ数で済んだのじゃないのかね。同著者の「フェティッシュ」で見られたような(しかしそれよりも退屈な)性の嗜癖が延々と(しかも登場人物をとっかえひっかえして!)続いて昇天どころか往生した。共感は不能だし、リアルでもないし、全くもって好みではないな。
さすがベテランのミステリー作家らしく、ほう、こんな細かな描写もトリックだったのか、って驚きは確かにあるけれど、物語の面白さ至上主義の私には、そこは評価ポイントではないので。
カバー画が私の大好きなジュゼッペ・アルチンボルド。アルチンボルド―エキセントリックの肖像
だが、勝手に名画の上に血しぶき飛ばされてちょっといただけなかった。