桜庭一樹「青年のための読書クラブ」
青年のための読書クラブ 桜庭 一樹 新潮社 2007-06 asin:4103049510 Amazonで詳しく見る |
良家の子女が集う女子高・聖マリアナ学園には、とびきりの変人たちが入る「読書クラブ」が存在した。もし実在したらこんな女子高に入りた…くない?小粋で寂しく愉快な連作集。
女子高?興味ないしな…と思いつつ、何かと話題の作家だからと読んでみればこれが当たり。
ある現実にはありえないような(だってとんでもない美形に天才に秀才がごろごろいて、その多くが「ぼく」女ですことよ?)学園の過去から未来までを語るのだが、主題は学園生活ではなく知的謀略に富んだ読書家たちなのだからこれがもうたまらない。
女子高というと大人気の今野緒雪「マリア様がみてる」を想起するが(「マリア」と「マリアナ」だし)、あちらが生徒の中からやんごとなき「薔薇さま」を選ぶように、こちらでは「王子」が選ばれる。しかし萌えとかろみのあちらに対してこちらは思惑と知略がぶつかり合い、ねっとりとした光線を撒き散らすがごとき様相を呈しているので、私にはこちらの方が好みなのであった。
そして何より素晴らしいのがラスト。きらきらしい、または闇色の少女たちは学園生活を終えたのち、どうなってしまうのか、その答えが愉快だ。
また、挿画も素晴らしい。一見ただの紋様に見えるが(私だけ?)、よく見れば少女たちの姿が隠されていて、本書のイメージにぴったりだ。
「赤朽葉家の伝説」はそこそこ面白かったんだけどラストがちょっとねぇ、と思われる向きは、ぜひ本書でリベンジを。