近藤史恵「ふたつめの月」
ふたつめの月 近藤 史恵 文藝春秋 2007-05 asin:4163259600 Amazonで詳しく見る |
ファミレスでバイトしていた久里子は、憧れのアパレル関係に就職するが、急に退職勧告されてしまう。そんな彼女の相談相手は、謎の老人・赤坂だった。身近な人の心の機微を読み解くミステリー連作集。「賢者はベンチで思索する」の続編。
いや、やられた。若き乙女の暮らしと恋の悩みを縦糸に、日常の謎をネップとして絡め入れ、赤坂老人の優しさと人生訓を横糸にした見事な織物のような物語だ。最もしみたのがヒロインと彼のじれったくなるほどピュアで不器用な恋。これが清々しくもむずがゆくてたまらない!乙女たるもの、こうでなくっちゃ。
後半はサスペンスタッチに急展開するけれど、全てがわかったときの感動は格別であった。
p.s.久里ちゃんは世間知らずでお人好しなため、読んでてストレスに感じるシーンもあるけれども、彼女みたいな善人がヒロインだからこそ成り立つ話なのだなあ。