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読書の記録

上野正彦「監察医が交わした 死体との悲しい約束」

死体との悲しい約束―監察医が交わした死体との悲しい約束―監察医が交わした
上野 正彦

青春出版社 2007-03
asin:4413036360

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法医学者として監察医務院に勤めた著者が死体の発する声なき声を聞くノンフィクション・シリーズ。
うーん、「死体は語る
死体は語る
」は名著だと思ったんだがなあ。やたら句読点の多い文章で、美文とはとても言い難い。
 現役を退いてからの本書は、当然のことながら傍観者的な姿勢が目立つ。凶悪事件へのワイドショーのコメンテーター活動をまとめた一冊と言えそうだ。現役で捜査に関わっていれば守秘義務から裏話を明かすわけにはいかないので、こうした傍観者スタンスは仕方ないかもしれない。
 だが、真摯な姿勢ながらも、子供のいじめは老人のいじめより注目され問題視されるだけましだ、など首をかしげるような記述もある。子供だろうが老人だろうが、いじめられたらつらいのは変わらないし、マスコミがいじめに注目するころには当事者は取り返しのつかぬ悲劇的な事態に陥っていることが多いのであって、注目されているイコール救いには全然ならないと、私なんかは思うのである。まあそれだけ老人のいじめ問題を著者が重視しているのは理解出来るが。
 あと年を経た作家にありがちなことではあるが、プチ自慢もちらほら。少し残念である。